暦Wiki
ΔTの予測†
- ΔTは観測値が得られるまで確定しませんから、暦象年表等の天体暦を推算するには数年後の値を予測する必要があります。
- ΔTは連続的に変動していく量ですが、便宜上年間を通して一定の値を秒単位で予測しています。
- たとえば2017年はΔT=68秒、2018年はΔT=69秒のような具合です。
ΔTの変動は不規則†
- ΔT=地球時(TT)−世界時(UT1)において、
- 地球時は国際単位系の1秒を単位に一様に進んでいく時刻系であり、「地球時の1日」=24時間=86400 SI秒となります。
- 一方、世界時は地球の自転にもとづく時刻系であり、地球の向きが(平均太陽に対して)1回転するのをもって1日=LODとなります。
- 地球の自転は一様ではなく不規則に変動していますから、その分だけ世界時も不規則に変動します。
- 短期的にも長期的にもこの変動がどうなっていくのか予測することは困難です。
- その結果、ΔTも不規則で予測困難なものとなります。
- これはうるう秒が不規則で予測困難な理由とまったく同じです。
- うるう秒の確定は約半年前ですが、ΔTはさらに数年先の変動を予測する必要があります。
- また、たとえうるう秒が廃止されても地球の自転変動がなくなるわけではありません。どんなに時間が経っても、地球が自転しなければ日は昇りませんから、予測は継続する必要があります。
ΔTとLODの関係†
- ΔTと「世界時の1日」LODには密接な関係があります。
- LODも「地球時の1日」と同じく86400秒なら、1日後にはどちらも86400秒だけ進みますから、ΔTは増減しません。
- LODが86401秒とすると、1日後には地球時は86400秒進みますが、世界時はまだ86399秒しか進みません。したがってΔTは1秒増加します。
- LODが86399秒とすると、1日後には地球時は86400秒進みますが、世界時は既に86401秒も進んでいます。したがってΔTは1秒減少します。
- このように、LODが86400秒からどれだけずれているかに応じて、ΔTは日々増減していきます。
- LODの86400秒からの超過量を積分すればΔTとなり、ΔTを微分すればLODの超過量が求まるという関係です。
- 上図のように、日々のLOD変動はかなり複雑で、明らかな季節変動も含んでいます。
- 予測するのは年単位でよいので、365日の移動平均をとると少し見通しがよくなります。
- 1970年代のように、LODが平均で3ミリ秒ほど長い状況が続けば、ΔTは1年に0.003×365〜1秒増加、すなわち1年に1秒程度のペースで増やせばOKです。
- 2010年代前半のように、LODが平均で1ミリ秒ほど長い状況が続けば、ΔTは1年に0.001×365〜0.365秒増加、すなわち2-3年に1秒程度のペースで増やせばOKです。
- 2000年代前半のように、LODが平均でほぼ86400秒な状況が続けば、ΔTはあまり変わらないので、同じ値を使えばOKです。
- 2020年台に入るとLODは平均的に86400秒を切るようになり、ΔTはじりじりと減少を始めました。このため、2023年は2022年の予測値70秒よりも小さな69秒を採用しています。
- とはいえ、問題はそのような状況が続くかであり、平均値の変動予測も決して容易ではありません。
関連ページ†
Last-modified: 2024-12-04 (水) 20:44:24