平成31年4月1日,平成に代わる新元号「令和」が発表され,憲政史上初となる天皇の譲位にもとづく代替わりもいよいよ準備が整った.暦象年表刊行日である5月1日に改元というのも何かの縁かもしれないので,今回はこれを軸に話をまとめてみたい.
政府の発表によれば,「令和」は『万葉集』巻五「梅花歌三十二首」の序文「初春令月 気淑風和 (
帰田賦の作者である
漏刻とは水の流れる速さが一様になるよういくつもの壺を管で連結したような装置(図1)で,水位の変化から時の経過を測る水時計である.日本書紀には,天智天皇十年四月辛卯(二十五日,グレゴリオ暦換算で671年6月10日),新しい台に漏刻を設置し鐘鼓を鳴らして時を告げた,という記事があり,これが6月10日「時の記念日」の制定につながった2.大正9年(1920)の記念日制定からまもなく100年が経とうとしている現在でも,当時の都 近江大津宮の近くにある近江神宮ではこれを記念した漏刻祭が毎年執り行われている.
日本書紀には天智天皇が中大兄皇子と呼ばれていた斉明天皇六年(660)に初めて漏刻を作り,民に時を知らせたという記事もあり,こちらは奈良県の飛鳥水落遺跡と推定されている.中大兄皇子といえば乙巳の変(645)に始まる大化の改新の中心人物であり,日本の年号の歴史もこの「大化」に始まり,現在まで248個を数える.
暦計算室では新元号の発表にちなんで,太陰太陽暦と太陽暦の暦日変換などにお使いいただけるよう,日本の暦日データベースと日月食等データベースを公開した.こういったツールも参考にしつつ,古代の時について想いをはせるのもまた一興ではないだろうか.
1) 藪内清, 中国の天文暦法, 平凡社, (1969). → 本文(1)に戻る
2) 河合章二郎, 時の記念日, 天文月報 第13巻第7号 , (1920). → 本文(2)に戻る
暦象年表2020より