惑星などの天体が地球にもっとも近づく状態を地球最近と呼ぶ.一般に,惑星の軌道は楕円軌道とはいってもかなり円に近いので,地球最近は外惑星なら衝,内惑星なら内合のタイミングとほぼ一致し (図1),平均的には地球と惑星の会合周期で繰り返す.外惑星は地球最近のころにもっとも大きく明るく観望の好機となるが,内惑星は地球最近のころでは太陽に近すぎ,観望には適さない.
火星は地球のすぐ外側を公転する惑星であり,会合周期は約780日≈およそ2年と2か月ごとに地球最近となる.今回は2018年7月31日,前回は2016年5月31日であった.このことは,地球最近のたびに,約2か月分ずつ軌道上の位置がずれていくことを意味する (図2).
もし惑星の軌道が真円であれば,どこで会合しても最近時の地球・惑星間の距離は変わらない.しかし,火星軌道の離心率は0.0934と楕円の度合いが大きく,もともと地球に近いこともあり,最近時の地球・火星間の距離は会合する場所によって著しく異なっている (図2).
具体的には,大きく近づく場合=大接近は0.373 au程度,近づくけれども距離がある場合=小接近は0.678 au程度で,じつに2倍弱の開きがある.2倍近ければ大きさ (視直径) は2倍,明るさは4倍になる1ので,大接近では大きく明るい火星を楽しめるわけだ.そして,2018年は2003年以来の大接近となる.
大接近と小接近の条件について考えてみよう.
おもな要因は火星の軌道が楕円であることだから,大接近となるのは火星の近日点付近で会合する場合である.火星の近日点は黄経336°くらいなので,地球がその付近を通過する8月30日ごろに会合すればよい (図3).2003年はその条件に近い.
逆に,小接近となるのは火星の遠日点付近で会合する場合である.火星の遠日点は黄経156°くらいなので,地球がその付近を通過する2月25日ごろに会合すればよい (図3).2027年はその条件に近い.
また,22会合周期≈47年であるから,11会合≈23年半経つと半周離れたところへ,22会合≈47年経つと元の位置へだいたい戻る.つまり,次に2003年並みに近づくのは2050年ということになる.このころには人類が火星に到達しているかもしれない.
なお,地球最近3日前となる7月28日明け方には皆既月食もある.日本付近では夜明けにかかってしまうのが少し残念だが,欠けてゆく月と大きな火星,両方のイベントを楽しみたい.
関連ページ)天象:地球最近の日時など
1) 実際には火星と太陽の距離も影響し,5倍弱程度明るくなる.→本文(1)に戻る
暦象年表2018より