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用語解説
暦Wiki
古代エジプトのこよみ
†
古代エジプトの暦は1年12か月、各月は30日、10日ごとの週で構成されます。
さらに、どの月にも属さない余分な5日 (Epagomene) を加えて365日となる太陽暦です。
3つの季節 (各季節に4つの月)
季節
月
Ꜣḫt
(Akhet)
土地が水に沈む洪水の時期
Thoth, Paophi, Athyr, Cohiac
Prt
(Peret)
土地が現れ、田植えと成長の時期
Tybi, Mesir, Phanemoth, Pharmouti
Šmw
(Shemu)
水が低く、収穫の時期
Pachons, Payni, Epiphi, Mesori
「エジプトはナイルの賜物」(ヘロドトス)
ナイル川は毎年定期的に氾濫し、肥沃な土壌を運んできました。これがエジプトに豊かな実りをもたらしたといわれています。
古代エジプトの人々は、日の出直前にシリウスが昇る=
prt spdt
(シリウスの
heliacal rising
(
ヒライアカル・ライジング
)
) を観測することで、洪水の時期を察知していました。
日の出直前にシリウスが昇るとは、太陽に近すぎて見えない時期を過ぎ、シリウスがふたたび見え出す日のことです。
シリウスに限らず、
デカンと呼ばれる星々が昇ってくるのを数えて夜間の時刻を把握
していました。
この観測からシリウスのヒライアカル・ライジングの時期が次第に365日のこよみとずれていくことがわかり、
1太陽年
の長さ〜365.25日に気づいたわけです。
紀元前1800年代といわれるパピルス (Papyrus Berlin 10012) には、Peretの第4月の16日にヒライアカル・ライジングが起こるという予測と17日にはそのお祝いを行なったという記述があります。
ヒライアカル・ライジングの時期は古代エジプト〜紀元前3000年ごろでは夏至のころ
*1
だったようです。
なお、現在ではアスワンダム、アスワンハイダムの完成により洪水は起きません。
この知識は後に
ユリウス暦
による
うるう年挿入
という概念につながります。
ただし、古代エジプトではうるう年は挿入していなかったので、こよみと季節はどんどんずれていきました。
この関係は1461暦年かけてまた元に戻ります (
ソティス周期
)。祭事は暦年、農業は太陽年と分けて暮らしていました。
1866年に発見されたCanopus stone (
Internet Archives
) には、紀元前238年にうるう年を導入しようとした形跡がありますが、定着しなかったようです。
ローマ皇帝アウグストゥスにより、ようやく古代エジプトでもうるう年を挿入するようになりました。
うるう年には余分な日を6日とします。したがって、通常はThothの1日は
ユリウス暦
の8月29日にあたりますが、うるう年ではこれが8月30日になります。
この1日ずれた関係は翌年
ユリウス暦
でうるうが挿入されるまで続きます。
この流れをくむ暦にはコプト暦 (
Coptic Orthodox Diocese of the Southern United States
) やエチオピア暦 (
Ethiopian Orthodox Church
) があり、現在でも4年に1回の割合でうるう年を入れています。
関連ページ
†
マヤ暦
ユリウス暦
季節
季節/季節のめぐりの周期
季節/季節の星座
古代エジプト暦/天体暦
古代ギリシャ暦
歳差
太陰太陽暦
太陽暦
要素/1か月とは?
要素/1か月とは?/月の日数
要素/1週間とは?
要素/1日とは?/1時間とは?
要素/1年とは?
暦
*1
現在では8月くらいですが、紀元前3000年ごろは
歳差
により5000÷26000×12=2か月程度早く、夏至のころ=
ユリウス暦換算
では7月くらい。
->
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Last-modified: 2019-05-08 (水) 13:11:58