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月の公転†
月の運動は複雑†
- ケプラーの法則の大元は万有引力の法則ですから、惑星だけでなく、月も地球の周りを楕円運動しています。
- しかし、太陽の影響により、軌道は一定ではなく、下記のような複雑な変化をしています。
- 実際に計算してみると、地球が月を引っ張る引力は、太陽が月を引っ張る引力よりも小さいことがわかります。
- 地球と月は相対的な位置を変えながら、一緒に太陽の周りを回っているともいえます。
- にもかかわらず、地球が月をとどめておけるのは、
- 地球も月もともに太陽に引っ張られているからで、太陽が地球を引っ張る引力で太陽が月を引っ張る引力を相殺した分よりは地球が月を引っ張る引力が大きいからです。
- たとえば、スカイダイビングしている二人はどちらも地球に向かって落ちていますが、手をつないだり輪になったりできるのと似ています。
- 月が地球の周りを公転する軌道面を白道面といいます。
- 黄道面と白道面はかなり近く、概ね同一平面と考えても構いません。したがって月の満ち欠けなどを考える際には平面的な説明で十分です。
- 厳密には白道面は黄道面に対して5.1°程度傾いています。このため、朔や望のたびに日食や月食が起こるわけではありません。
- 白道面の傾く方向は一定ではなく、太陽の影響により変動していきます。
月の公転に対する太陽の影響†
- 太陽が月を引っ張る引力(赤線)から、太陽が地球を引っ張る引力(青線)を差し引いたもの(紫線)が、月の公転に対する太陽の影響になります。
- この影響は太陽と月の相対的な位置関係=月の満ち欠けや、月の楕円軌道の向き (近地点の方向) などに依存します。
出差 (Evection)†
- 上記の力は楕円を太陽の方向にゆがめます。
- 楕円の向きと太陽の位置関係により、与える影響は異なります。
- 太陽が楕円の長軸方向にあると、楕円の度合いは強まります。
- 太陽が楕円の短軸方向にあると、楕円の度合いは弱まります。
- プトレマイオスの時代には既に知られていました。
二均差 (Variation)†
- 太陽の影響は、
- 朔や望では地球が月を引っ張る引力を弱める方向に働きます=軌道のカーブが緩くなります。
- 弦では地球が月を引っ張る引力を強める方向に働きます=軌道のカーブがきつくなります。
- この結果、朔や望の方向が短軸となるような変形を引き起こします。
- 16世紀にティコ・ブラーエが発見したといわれています。
- これを10世紀ごろにアラビアの天文学者アブー・アルワファーが発見した、という説は誤りです。この説は1836年にフランスのSedillotにより主張され、論争となりましたが、19世紀のうちに否定されています*1。
- すなわち、アルワファーが述べているのは遠地点方向のずれ (prosneusis) のことであり、プトレマイオスのアルマゲストを説明したものに過ぎません。
年差 (Annual Equation)†
- 地球の軌道は楕円ですから、地球と太陽の距離、したがって太陽の与える影響は1年周期で変動します。
月の不等 (Inequality)†
- 月の平均運動からのずれを月の不等と呼びます。
- 歴史的経緯から、楕円運動の影響(中心差)も含みます。
- 太陽による影響(出差、二均差、年差・・・)
- 黄経・黄緯を考える場合には黄道方向への変換(道差)
- おもな項の大きさや周期は表のとおりです (出典:国立天文台編「理科年表平成26年版」, 丸善(2013).)。
不等 | 黄経[″] | 距離[km] | 周期 |
中心差 | 22640 | 20905 | 1近点月 |
出差 | 4586 | 3699 | 31.812月 |
二均差 | 2370 | 2956 | 半朔望月 |
年差 | 666 | 49 | 1近点年 |
関連ページ†
たとえば、A History of Astronomy from Thales to Kepler, J.L.E. Dreyer, Dover Publications Inc., (1953)., A History of Ancient Mathematical Astronomy, O.Neugebauer, Springer-Verlag (1975).->
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Last-modified: 2022-07-11 (月) 14:39:57